2倍の速度で進む円安、前回円高時に比べ関連倒産件数は3倍超

〔クロスマーケットアイ〕2倍の速度で進む円安、前回円高時に比べ関連倒産件数は3倍超

2014年 12月 5日 16:07 JST


[東京 5日 ロイター] - 円安が猛スピードで進んでいる。2007年からの円高は4年かけて40円の円高が進んだが、今回は2年で40円の円安となった。倒産は円高、円安どちらでも発生するが、企業が対応に困るのは為替変動のスピードが速い場合だ。円安倒産は中小・零細の輸入企業が多いため1件当たりの負債総額は小さいが、件数は円高倒産に比べ3倍以上。足元の急速な円安による倒産増加が警戒されている。


<円安倒産の本格化は来年以降>


企業倒産は円安でも円高でも起きる。前回、円高倒産が増加したのは08年から12年上半期にかけてだ。ドル/円は07年6月に124円を付けた後、11年10月には75円まで約4年で49円下落した。


当時は、円高によって輸出企業を中心に販売不振・受注減少が広がり、円高を原因とした関連倒産は累計で243件(帝国データバンクの集計、データ元は以下同じ)、負債総額は9兆0402億円に達した。


一方、今回の円安は12年11月半ばの80円付近から、足元では120円まで円安が進んでいる。変動幅は前回の円高よりも現時点ではやや小さいが、今回の特徴はスピードが速いことだ。2年で40円と前回の2倍近い急ピッチの円安進行となっている。


帝国データバンク東京支社情報部の内藤修氏は「円高でも円安でも倒産は発生するが、倒産が増えるのは為替変動が速い場合だ。企業に対応する時間がないためとみられる。為替の影響は通常、3─6カ月遅れて倒産に表れてくる。足元の円安による関連倒産は年明け以降、本格的に出てきそうだ」と警戒する。


今回の円安倒産は、負債総額でみれば累計で1兆9486億円とまだ小さく、1件当たりの負債総額は約45億円と円高倒産の372億円の8分の1以下だ。しかし、件数では、円安を原因とした企業倒産は13年が130件、今年が11月までで301件と急増。円高倒産がピークだったのは11年の85件であり、件数では3倍以上の規模となっている。

<体力乏しい中小企業>


日本の輸出企業は約3.3万社あるのに対し、輸入企業は約7万社と倍以上。輸出企業には大企業が多いのに対し、輸入企業は中小・零細企業が多い。それゆえ倒産も負債規模が小さい一方で、件数が増える結果となっているとも言える。実際、日本の企業倒産全体では今年10月まで15カ月連続で前年比減少している。


ただ、倒産件数が前年比で減少し始めたのは09年下期からであり、13年から始まったアベノミクスだけの成果とは言えないかもしれない。また、足元で進む急激な円安が企業倒産を増加させているのは事実であり、今後の展開を注視する必要がある。

実際、中小企業の体力は依然弱い。帝国データによれば総資本1億円未満の中小企業の売上高営業利益率はマイナス0.03%と赤字状態。自己資本比率も0.76%と債務超過の状態にある。金融円滑化法による借入金の元本返済猶予や返済条件変更によって何とか生きながらえている企業も少なくない。足元の円安が「とどめ」を刺す可能性もある。


中小企業の従業者数は約3200万人と全体の約7割を占める。円安で潤う大企業の恩恵が波及するには時間がかかっているのが現状であり、中小企業の景況感が悪化すれば、アベノミクス歓迎ムードは後退する。

 <日本株には割高感も>


円安にはプラス面もあればマイナス面もある。120円に進んだ円安が日本経済に与えるトータルでの影響については見方が分かれているが、両面の影響があるということに異論はないだろう。さらに企業倒産に見られるように、企業が対応できないような急激なスピードの円安はデメリットが大きくなる。


しかし、円安を好感した日本株の上昇は止まらない。5日の市場で日経平均 は5日連続で年初来高値を更新した。11月米雇用統計前の利益確定売りをこなしての上昇だ。「円安でドル建ての日本株が目減りする海外投資家は様子見姿勢となっているが、日銀のETF(上場投資信託)買いなどを期待した買いが、株価が下がれば入る」(大手証券トレーダー)という。


「16年のS&P500 の予想一株利益は147ドル。PER16倍として15年末には今から13%上昇の2350ポイントが見込める。米景気改善、米株上昇、ドル高・円安が続けば、日本株も上昇が期待できる」(野村証券・投資情報部エクイティ・マーケット・ストラテジストの村山誠氏)との強気な見方もある。


ただ、米国経済も万全というわけではない。11月の米自動車販売は年率1720万台と2003年以来の高水準となったが、好調な自動車販売を支える自動車ローンは「サブプライム化」しているとの指摘も多い。年末商戦も好調なネット販売と低調な店舗販売をトータルしたすう勢はまだ読めないのが現状だ。


生産動向などから日本も10─12月期以降の景気持ち直しが見えてきたとはいえ、いまの急ピッチの株高を支えるのは、あくまで期待感にすぎない。これまでプラス材料とされてきた円安にはデメリットも見え始めている。   日経平均のPERは16倍を超えてきた。「割安感はなくなり、警戒すべき水準に上昇している。バブルと言えないまでも、悪いニュースに反応しやすくなっているのではないか」とニッセイ基礎研究所・金融研究部主任研究員の井出真吾氏は指摘している。

(伊賀大記 編集:山川薫)

※ 大企業(一部上場)企業の利益が円安で輸出がのびて、その内部留保から賃金を支払って見かけじょう景気が良いようにして、雇用も増やしているし、また政治献金を党にしている。アベノミクスはうまく行っているように宣伝、しかし実態は、10%増税もできない経済状態、更に行き過ぎた円安と政府の考えていた以上に大企業が海外に工場展開していたことや輸入に依存している製品や原材料、燃料、電気代の高騰は予想以外であった。それに中小企業はその恩恵を受けられずに、地方の企業含めて大打撃になっている。このあたりがあまりマスコミでも扱われていない。タカタのエアバックの問題も中小企業に影響を与え、リコールの額や賠償しなければならなくなると被害は大きい。