EUの打撃は以前ほどではないがまったくないわけではない。無視できぬ事態にも

軽視できぬギリシャ破綻危機

2015/5/15付

 

 財政が逼迫しているギリシャへの融資再開交渉が難航している。厳しい財政・経済改革を求める欧州連合(EU)と、抵抗するギリシャとの溝が埋まらないためだ。

 このままではギリシャ債務不履行(デフォルト)に陥りかねない。そうなればギリシャ経済は一段と混乱し、影響が長期化する恐れがある。ギリシャのチプラス政権が改革に及び腰なことが問題の主因だが、ドイツをはじめ欧州各国も危機悪化の影響を軽視せず、交渉打開に全力をあげるべきだ。

 今週開いたユーロ圏財務相会合では、融資をしているEUとギリシャの間で一定の歩み寄りがあったが、EUが求める年金の削減や労働市場改革をギリシャが拒否したため、結論が出なかった。

 最終的には決着に至るとの声も多いが、ギリシャの財政がすでに破綻寸前になっていることや、先行きを懸念した市民の預金引き出しなどで金融が機能不全に陥りつつあることに注意が必要だ。相手の譲歩を待つ瀬戸際戦術を双方がこれ以上続けるのは危険である。

 凍結されている融資の再開だけでギリシャが再建できるわけでもない。現行の金融支援の期限は6月末までで、それ以降の支援策づくりへ向けた協議も急がなければいけない。融資再開の交渉に手間取っている場合ではない。

 万が一デフォルトに陥れば、新規支援は難しくなる。ギリシャ資金の国外流出防止のための資本規制に加え、公務員給与などの政府の支払いを借用書で済ませなければならなくなる可能性もある。

 欧州経済が安定してきたため、ギリシャが破綻しても欧州全体への経済・金融面の影響は限定的との見方もある。仮にそうだとしても、地政学的に重要な位置にあるギリシャの政治が一段と混乱することによる影響も無視できない。

 ギリシャが財政と経済再建に向け責任ある改革を断行する。それを前提にEU側も柔軟な打開案を示す。国内的には不人気でも長い目で自国や欧州の繁栄にとってプラスになる決断を強く求めたい。