ロシアに騙されてはいけないので日露首脳会談は当分見送るべき

錯綜する北方領土問題 

しかし、安倍首相が解決を悲願としている北方領土問題、そして日本が北方領土問題の解決を前提としている平和条約締結は難しいという現実は変わっていなかった。 

たとえば、2015年9月にモルグロフ外務次官が北方領土問題は「解決済み」と述べ、領土問題の交渉の可能性が全くないような雰囲気すら醸していた。加えて、2016年1月26日には、ロシアのラブロフ外相が日本との平和条約交渉について、領土問題の解決とは全く別であるとし、日本の立場を否定しただけでなく、平和条約がない状態でも経済関係が活発化していることから、平和条約によって両国の経済関係がより一層発展するという日本の主張をも打ち消した。また、日本が国連安全保障理事会常任理事国入りを目指すのであれば、よりバランス感覚を持つべきだとして、事実上、日本の米国追従外交を批判するなど、ロシアの対日強硬姿勢が目立っていた。 

その一方で、訪露がほぼ確定してきた4月12日には、やはりラブロフ外相が北方領土問題について「4島全てが交渉対象」という考えを表明した。そして、4島の帰属問題解決に向けた交渉を「拒否しない」とも明言し、「われわれは4島の帰属を完全に明確にしたい」とも述べ、日ロ間に領土問題が存在していることを確認したのであった。 

このことの意義は実に大きく、ロシアが軟化したのではないかという希望的観測も持たれた。だが、訪露直前の5月2日には、極東地域や北方領土の土地を希望する国民に無償で提供する法律がロシア議会の上下両院で可決されたあと、プーチン大統領が署名し、ホームページを通じて公布され、成立した。具体的には、極東地域や北方領土への移住を希望するには、都市から離れた場所の1ヘクタールの土地を無償提供し、農地などとして5年間使えば、正式に所有を認めるというものだ。同制度は5月から沿海地方、カムチャツカ地方、サハリン州などで試験的に施行され、10月からは極東の全域および北方領土にも適用範囲を広げられる予定である。 

プーチン政権は発足当時から、開発が遅れ、人口も減る一方の極東と北方領土の発展を優先課題に掲げ、インフラ整備や貿易の規制緩和などを行ってきたが、今回の法律が施行された背景には、経済状況が悪化している中で、また極東・北方領土向けに想定されていた予算が2013年以降、クリミアにかなり振り向けられるようになっている中、同地に移住者や投資を呼び込むことで、政府の予算を使うことなく開発を進める狙いがあると考えられる。

 最近、極東などへの中国企業・工場の誘致が実に熱心になされており、それもこの計画と同じ目的にあると言えるだろう。つまりロシア政府は、日本に対しては北方領土の帰属について明確でないことを認めながら、同時に人口増とその定着を目指す、つまり実行支配を強化するという矛盾した動きを見せているのである。しかも、5月4日には、ペスコフ大統領報道官が、北方領土問題について、首脳会談で大きな進展が可能だとは思わないという、日本側の期待感を挫くだめ押しの一言まで発していた

※結局、ロシアの狙いは領土問題を棚上げで、経済的協力を考えている。さらに平和条約締結ですべての手打ちをしようと考えている。安倍首相がこれに載せられいる。したたかなプーチン大統領との交渉はしないのが今後の交渉を進めるうえでしないほうがいい。つまり秋に訪日要請はしないほうがいいと思う。11月のアメリカ大統領選の結果しだいで、日米間の政治・経済情勢がかわる。どちらにしても日ロの首脳会談をこの時期にするのはまずいと思う。つまり、ロシアにはいいがアメリカとの関係はプラスにならない。