アベノミクス終焉が漂ってきた。

色あせるアベノミクスへの期待、エコノミストが辛口採点

 (ブルームバーグ):一進一退を続ける日本経済の再生にアベノミクスはあまり大きな成果を上げていない--。ブルームバーグ・ニュースが実施したエコノミスト調査でこんな評価が出た。

調査は、3年間にわたる「3本の矢」による経済政策アベノミクスの効果について、エコノミスト23人を対象に2月26日から3月4日まで実施した。それによると、アベノミクスの総合評価は10点満点で4.6点となった。

アベノミクスの下で日本銀行は量的質的緩和を導入し、円相場は大幅に下落。第2次安倍政権が発足した2012年の終盤から昨年にかけて株価も大幅に上昇した。しかし景気は同じようには回復せず、14年の4-6月期と7-9月期は2四半期連続してマイナス成長を記録、その後も実質国内総生産(GDP)は一進一退を繰り返している。

持続的成長のためには構造改革が必要というのが多くのエコノミストの見方で、安倍政権がこれを実行できるかに焦点は移っている。安倍首相の任期は2018年まで。すでに道半ばを過ぎ、労働市場改革や指導的役割に就く女性の増加など大胆な改革の実現に残された時間は少なくなってきている。

(1)「下振れ圧力」

安倍晋三首相は2013年9月にニューヨーク証券取引所で「ジャパン・イズ・バック」「バイ・マイ・アベノミクス」と訴えたが、背を向け始めている海外投資家もいる。米アトランタに拠点を置き425億ドルを運用するリッジワース・インベストメンツのシニアストラテジスト、アラン・ゲイル氏は「日本の物語は多くの人が期待していたようには展開していないので、先行きは日本市場に下押し圧力がかかるだろう」と指摘する。

ゲイル氏は日本を含めた海外投資を減らしたという。「日本人はいろいろ試みているが、けん引力にはなっていないようだ。聞こえてくるコメントの大部分は、潜在力を解き放つために日本は構造改革に本格的に取り組まなければならないという考えの周辺を漂っている」と話す。

(2)売り越し

TOPIXは今年に入って12%下落、日本の株式売買の7割を占める海外投資家は8週間連続でネットで売り越した。2013年に海外投資家が15兆円を日本の株式市場につぎ込んだのとは対照的だ。

ブルームバーグの調査では、アベノミクスの3本の矢のうち、成長戦略のための構造改革に取り組むという3本目の矢により手厳しい評価が下った。持続可能な成長軌道に日本経済を乗せるという項目の評価は平均4.1点、構造改革で将来の基盤をつくるという項目の評価は4.0点だった。これに対し、デフレマインドの払しょくは5.1点だった。

日本経済新聞テレビ東京が2月26から28日まで実施した世論調査でも、アベノミクスを「評価しない」が50%と初めて5割を超え、「評価する」は31%にとどまった。

(3)大きく進まぬ構造改革

信州大学の真壁昭夫教授は、アベノミクスの問題点として過度な金融政策への依存を挙げる。今後金融機関の収益懸念が高まる可能性やマイナス金利で消費者心理が悪化する恐れもあり、「デフレ経済からの脱却にさらなる時間がかかることにつながる可能性がある」とみる。また「株価が上昇している間に財政再建規制緩和などの構造改革が大きく進まなかったことも中長期的な成長基盤弱体化の一要因になる恐れがある」という。

アベノミクス消費者物価指数の下落基調には歯止めがかかり上昇基調に転じた。生鮮食品やエネルギーを除けばインフレ率は0.7%に達している。最近までは円安は輸出企業に記録的な利益をもたらした。とはいえ、アベノミクスが狙い通りに効果を発揮していないことを示す事実には事欠かない。* 厚生労働省によると、ボーナスや残業手当を含めた2015年の実質賃金は4年連続で減少した。* 内閣府によると、2014年4月の消費税増税後、民間消費は2年連続で減少した。* 国際通貨基金IMF)によると、日本の1人当たりGDPは2012年から2015年までの3年間で2.8%増加したが、その前の3年間の6.4%増に及ばない。

(4)ゲームの終わり

バークレイズ証券の森田京平チーフエコノミストは「そろそろ『期待』だけではなく、実体経済の潜在的な成長力に働き掛ける政策を明示してほしい」という。4年目に入ったアベノミクスには衆院議員の任期に相当する期間が経過しつつあることを意味すると指摘し、「労働市場改革、法人税率のさらなる引き下げ、幅広い規制緩和など、まだまだ重要課題は残されている」とみている。

明治安田生命保険の小玉祐一チーフエコノミストは、「最近の安倍首相からは、岩盤規制の改革に向けた意欲を失いつつあるようにみえる。規制改革が歩みを止めてしまったら、アベノミクスはジ・エンドである」という。みずほ総合研究所の高田創チーフエコノミストは、25歳になる息子さんの人生はこれまですべてがデフレだったことに触れ、「3年くらいやったくらいでは意識は変わらないと思う。人生を否定することになるので」とコメントした。

※ アベノミクスで、景気の好循環を期待しているがいつまでたっても上向かない、むなしく、そのうちよくなるがつづいてそろそろ賞味期限切れから消費期限切れになるとしか思えなくなってきた。世の中も焦燥感が漂いはじめている。